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連載小説【走れエロス】2/8
私はビールを、明菜さんはウイスキーの水割りを注文した。
マンションのリビングルームにあたるところが談話室になっており、中央に配されたガラストップのテーブルを囲むようにしてソファが置かれている。私たちはバルコニーを背にしたソファを陣取り、その両側では、女装さんと男性のカップルが互いを意識しながらイチャついていた。正面には、肉付きのいい女装さんがぽつんとひとりで座ってる。

「なあひかる、あのデブより俺のほうがずっときれいやと思わんか?」
「ちょっ・・・やめてくださいよ」
「左の女装も、ヒョットコみたいな顔してやがら」
「あのねえ」
「右側の女装もひどいね。まず服のセンスがなってねえな」
どんだけ自信過剰なんスか!

そこに、50過ぎの長身男性が缶ビール片手にやってきて、明菜さんの隣に腰を降ろした。
「女同士で楽しそうやね。ぼくはヤマモト、みんなからはヤマさんって呼ばれてる。そっちの彼女はたしか・・・ひかるちゃんって言うたっけ」
「あ、はいそうです」
「2ヶ月くらい前にここで会ったこと、覚えてる?」
忘れもしない、2ヶ月前。
私がある男性と意気投合し、隣のいわゆる「ヤリ部屋」に行ったら、あとからこの男性がやってきて、無理やり3Pプレイに持ち込んだ。気の弱い最初の男性は薄笑いを浮かべながらこの男の下僕のごとく動き回り、結局2番目に甘んじた。最初に誘ったのはこの人なのに、デリカシーに欠けるというかジコチューというか、とにかくこの一件があって以来、私はこの店に来ないようにしていた。

「きみは、ここに来るのが初めてらしいね」
「ん? まあな」と、明菜さんがぶっきらぼうに答える。
「女装を始めたのは、最近?」
「今日が初めてや」
「ほほお・・・ってことは、まだ手つかずってわけか」
明菜さんが、キョトンとしてる。
「手つかずっちゅうのは、どういう意味や?」
「そりゃあ、アレに決まってるがな」
「ははあ・・・おいひかる、このおっさん、俺とスケベする気らしいで」と、耳元で囁いてきた。
こんな気持ちになったのは、うちのおかあちゃんが近所の奥さんの家に怒鳴り込むところを目撃して以来だ。

「ごめんなさ~い、私、男性とエッチする趣味はありませんのよ、オホホ」
「そうか。まあ、そんな子もいるからな。残念やけどあきらめるか」
「代わりに、ひかるちゃんを可愛がってやってくださいな」
こ・・・こらこら!
「そうさせてもらうか。ひかるちゃん、こっちおいで」
強引に手を引っ張り、ヤマさんが自分のひざの上に私を座らせた。
「相変わらずきれいやなあ。この白い太もも、たまらんわ」
かさついた手が、スカートの中を這い回る。
明菜さんのほうをチラッと見ると、あさっての方角を向いて、のんびりタバコをくゆらせていた。

「あの、今日はダメなんです」
「なんでや?」
「明菜さんをエスコートせんとアカンし」
「ほんなら、ふたり一緒に可愛がったげるがな。さ、隣の部屋に行こ」
そういって明菜さんのコートを持って立ち上がろうとしたとたん、いきなり明菜さんがヤマさんの胸倉を掴み、ものすごい形相で睨みつけた。
「触るな」
「あ・・・いや、ぼくはただ、コートを持っていってあげようかと」
「ええか、何度も言わせるなよ。これに触るな」
「・・・わかった」

ヤマさんが帰ったあと、明菜さんは眠くなってきたのか、ソファでウツラウツラと舟を漕ぎ始めた。
「明菜さん、こんなトコで寝たら風邪ひいちゃいますって。隣の部屋、誰も使ってないみたいやから、そこでちょっと横になったらどうです?」
「そうやな、そうさせてもらうか」
コートをしっかり握りしめ、明菜さんが隣の部屋へ消えていった。

さて、私はどうする?
時計を見ると、午前2時を少し回ったところ。
明日・・・というか、今日も仕事だから、そろそろ帰りたい。でも、このまま明菜さんを放って帰るのもなんだか気が引ける。というか気になって仕方ない。あんな物騒な連中が明菜さんを探し回っていたのだ。このまま帰って、明菜さんに何かあったら責任を感じる。

談話室を出て、パソコンをいじっていた夏子さんに声をかけた。
「夏子さん」
「何?」
「お願いがあるんです」
「?」
「明菜さんを、明日の夜まで泊らせてあげられないでしょうか」
丸一日、姿をくらましていれば、明菜さんを探していた連中があきらめるかもしれない。完全ではないにしても、今より手薄になるのは間違いない。
私は会社に行き、帰りに明菜さんにぴったりな洋服を買ってここに戻ってくる。できるだけ目立たない、シンプルな服がいい。レディースのサングラスも買っておこう。それなら新幹線に乗っても簡単にはバレないだろう。

「困ったわねえ、私も後片づけが済んだら家に帰らなきゃいけないし」
「あの人、なんかワケアリみたいなんですよ。よくはわからないけど、見つかったらひどい目に遭わされると思うんです」
「見つかったらって、誰に?」
「たぶん、ヤのつく人」
「ちょっとぉ、冗談やないわ。そんな厄介なことに巻き込まないでよ」
こりゃ、ヤブヘビだったか・・・

「ひかるちゃんには悪いけど、すぐ出てってもらうわ」
「そ・・・そんな」
「こんなこと言いたくないよ。でも、他のお客さんに迷惑かけるわけにいかないでしょ。私の立場からは、そう言うしかないのよ。わかってちょうだい」
たしかに、夏子ママの言うとおりだ。

そのとき、ヤリ部屋から女装さんと男性のカップルが出てきた。
あれ? 誰も使ってないと思ってたのに・・・
談話室を見ると、右側のソファがカラッポになってる。どうやら私が夏子さんと喋ってる間に入ったらしい。
男性のほうが夏子ママのところにやってきて、こう耳打ちした。
「あの女装さん、背中に刺青あったで。あんなん店に入れたらアカンわ」

ヤリ部屋に入ると、明菜さんが下着姿のまま、布団の上であぐらをかいていた。しっかりコートを握りしめながら。
「はは、あいつら、俺の彫物見て目ェ白黒させとったわ」
「明菜さん、ちょっと言いにくいんですけど」
「わかってる。出ていけって言われたんやろ?」
「・・・・・」
「ま、しゃあないわ。極道モンは、どこ行っても嫌われる運命やからの」
p0068.jpg
外に出ると、小雨が降っていた。
「ひかるはもう帰れ。あとは俺がなんとかする」
「なんとかするって、どうするつもり?」
「とにかく腹が減った。牛丼でも食って、タクシーで新大阪まで行くか」
「でも、始発までだいぶ時間ありますよ」
「コンビニで立ち読みでもしてるさ」
「私も、牛丼つきあいます」
「やめとけ。もし何かあったら、おまえもタダじゃ済まん」
「私と一緒にいるほうが絶対目立ちません。それに、私もお腹ペコペコやし」
「・・・わかったわかった。けど、牛丼食ったらすぐ帰るんやぞ」

牛丼屋に入ると、思いっきり店員と客たちからガン見された。そりゃそうだ、筋肉ムキムキの女装さんと、パンツが見えそうなほど短いスカートを穿いた女装さんが入ってきたんだから。
明菜さんをいちばん奥の席に座らせ、私はその隣に腰掛けた。明菜さんがぎろりと視線を走らせると、とたんにみんな目を逸らした。

「ひとつ、質問していいですか?」
「内容による」
「女装バーに入ってきたとき、あそこがそういうお店だってことを知ってるって言いましたよね。なんで知ってたんですか?」
「あのビルのスナックに知り合いの女がいて、そいつから聞いたんや」
「もうひとつ。なんで追いかけられてるんですか?」
「それには、答えられんな」
「捕まったら、明菜さんはどうなるの?」
「それも、黙秘権ってのを使わせてもらおか」
「・・・・・」
「余計な詮索はせんほうがいい。俺はおまえのことが心配なんや」

牛丼が運ばれてきて、割り箸をつかんだそのとき、見覚えのあるふたりが店内に入ってきた。
「ヤス、おもろいかっこうしとるやないけ」
「ちょっと待ってくれんか。まだひと口も食うてへんのや」
「ああ。しっかり味わって食えよ」
ガラス戸の向こうに、黒いベンツが停まっていた。

店員が青ざめた顔で厨房に引っ込み、牛丼を掻き込んでいた客たちが半泣きで箸を置くと、すごすご店を出ていった。
「ヤス、時間切れや。さっきの客がポリにチクるかもしれんでの」
「まだちょっとしか食うてへん。最後の晩餐くらい、ゆっくり食わせろや」
「そっちのオカマちゃんも、一緒に来てもらうで」
「こいつは関係あらへん。何も知らんのや。ウソやない」
「ほお、えらいかばうやないけ。おまえにそんな趣味があったとは知らんかったで。こいつのケツに真珠入りマグナムをぶち込んだか、あ?」
「そんなんやない。なあ後生や、こいつだけは見逃したってくれ。たのむ」
「ねえちゃんも、えらい厄病神に憑りつかれたもんやなあ。まあこれも災難やと思て、おとなしゅうついて来てもらおか」

刹那、明菜さんが熱いお茶を傍らの男の顔にぶっかけ、もうひとりの男の鼻に強烈な頭突きを食らわした。すかさずカウンターを飛び越え、私を持ち上げてカウンター内に引きずり込んだ。厨房を抜け、裏口のドアを蹴破って表に出る。
「くそっ、なんちゅう走りにくい靴じゃ」
脱いでるヒマはない。そのままふたりで駐車場を横切り、住宅街に続く道を懸命に駆けた。背後から「待たんかい!」という怒鳴り声。
「明菜さん、コートは」
「そんなん、どうでもええ。とにかく走れ!」

あれだけ大事にしていたコートを見捨ててまで私を逃がそうとしてくれたことに、なんだか胸がジーンとなった。
「ひかる、こっちや」
人ひとりがやっと通れるほどのビルの隙間に逃げ込む。
うしろを見ると、男たちが一列になって路地に入ってくるところだった。
「ここであいつらを食い止める、その間に逃げろ」
「そんなん・・・いやです」
「グダグタ言うてんと、さっさと逃げんかい!」
「けど・・・明菜さんが」
「たのむ、逃げてくれ。後生や」
ワンピースを引き裂き、ブラジャーの中からナイフを取り出した。
「そう簡単に捕まってたまるかい。もし逃げおおせたら、あの女装バーで落ち合おう」
「でも」
「早よ行け!」
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/07/31 22:41】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2)
連載小説【走れエロス】1/8
ドアが開いたとたん、みんなの目がテンになった。私なんか、歌いかけてたカラオケを中断し、マイクを握ったまま固まってしまった。
初夏だってのに黒いロングコートを着て、短く刈った髪にサングラス、どこからどう見ても「ヤ」のつく仕事に従事してらっしゃるお方のようだ。
そんな人が、なんで女装バーなんかに・・・
p0464.jpg
「いらっしゃい。お客さん、ここは初めてですか」と、ルミ子ママ。
じろりと店内を見回し、男が無言でうなずいた。
「うちは見てのとおり女装のお店なんですけど、ご存じでらっしゃいます?」
「ああ、知ってる」
「それとね、うちはカタギの商売してますから、その筋のお客さんはお断りしてるんですよ」
「・・・俺が、ヤクザに見えるか」
「言っちゃ悪いけどね」
私を含め、店内の客全員が凍りついた。ママ、どんだけ勇敢やねん!

「おもろいママやな。気に入った。それに、きれいなねえちゃんもぎょうさんいてるし」
「この子たちに手ェ出したら承知せえへんよ」
男が苦笑した。
誰も男と視線を合わせようとしない。ただひとり、ルミ子ママを除いて。
こんなに緊張したのは、中学のとき隣町の古本屋までエロ本を買いに行って以来だ。

「人を外見で判断しないでほしいね。俺は女装したくてここに来たんや」
これには、さすがにみんなびっくりした。
「あなたが、女装を?」と、ママが不審そうに尋ねる。
「電話予約でもしといたほうがよかったかな」
「いえ・・・たしかにあなたは、ここが女装のお店だってことを知ってたって言ってたわよね。知らずに入ったお客さんは、たいていバツの悪そうな顔して出ていきはります」
「わかったら、とりあえず座らせてくれるか」
「あ、ごめんなさい。カウンターの奥、ひかるちゃんの隣が空いてますから、そこに座ってちょうだい。えーと、お飲み物は何になさいます?」
「じゃあ、ビール」
この緊張は、高校のとき十三のストリップ劇場にひとりで行って以来だ。

「ひかるちゃんって言うんか。よろしくな」
笑うと、あごの古傷がひきつって、よりいっそう凄味が増した。
「よろしくです。あの、女装するって本当ですか?」
「俺がしたら、おかしいか?」
「あ・・・いえ、そんな意味で言ったわけじゃ・・・」
「ふふ、おまえみたいに可愛くはなれんやろけど、こんな俺でも、女になりたいときもある」
「そ・・・そうですね」
身長175センチ、体重80キロくらい、年齢は40前後か。日に焼けた顔は精悍で、笑うと目尻に深い皺が寄って、ぞくりとするほど魅力的だった。

「お待たせしました」といって、ママがカウンター越しにビールを注いだ。そのグラスを私のところに持ってきたので、あわてて自分のグラスを持ち上げ、かちんと合わせて乾杯した。
「でも困ったわねえ。今夜は私ひとりなのよ。もうひとりスタッフがいるんですけど、あいにく今日はオフで、メイクしてあげられそうにないわ」
「・・・そこをなんとかたのむ」
「でもねえ、私がメイクしてる間、お店のほうが留守になっちゃうでしょ」
男は落胆したというより、切羽詰まったような表情をしていて、私はだんだん気の毒になってきた。

「ママ、よかったら、私がお店のほう手伝いましょうか」
「え? そんな悪いわ」
「水割り作るくらいできますよ。それに、みんな帰るみたいやし」
男がスツールに腰掛けたとたん、こぞってみんな帰り支度を始めていた。
「じゃあ、1時間だけお願いしようかしら。奥の更衣室にいてるから、わからんことがあったらいつでも呼んでちょうだい」

男を連れてママが更衣室に行ってしまうと、店内は私ひとりになった。
更衣室といっても奥の倉庫を改造して作った簡素なもので、ドレッサーが2つきり置いてあるだけだ。壁には貸衣裳がずらりと掛けられていて、私も駆け出しの頃はよくこの衣装のお世話になった。下着だけは買い取りで、上下セット1000円だ。貸しウィッグが500円、メイク代は1000円。無駄毛を処理できない人のため、厚手のストッキングまで用意されていた。あの人は、おそらくフル装備になるだろう。

そこに、人相の悪い男がふたり入ってきた。
「いらっしゃいませ」
ふたりは座らず、ひととおり店内を見回すと、ドスの利いた声でこう言った。
「ここに、こんなヤツが来えへんかったか」
突きつけられた写真を見ると、あの男が写っていた。ストライプの入ったスーツを着て、ベンツによりかかってる。サングラスはかけていない。
「・・・いえ」
「ねえちゃん、オカマか」
「はい、ここはそういうお店ですから」
「そうか。なら、ヤスのやつが来るわけないか・・・邪魔したな」

ふたりが去ったあと、ママが奥からぬっと顔を出してきた。
「お客さん来てたんとちゃうの?」
「ノンケさんが間違えて入ってきはったみたいです」
「そう・・・あと30分くらいでできるから、もう少し店番しとってちょうだい」
「わかりました」

結局、私がカウンター内にいる間、来たのはあの2人だけだった。
奥から出てきた男の姿を見て、さすがに絶句した。体格に合う服がなかったのか、ライトパープルのワンピースははち切れそうで、たくましい腕がかえって目立っていた。黒のストッキングもどこかチグハグで、9センチのピンヒールがいかにも歩きにくそうだ。ウィッグはロングのストレート、これがまたぜんぜん似合ってない。精悍な顔つきだから、コマンチ族の戦士みたいに見える。メイクもよほど苦労したと見え、顔だけがやたら白く、まぶたに貼ったつけまつ毛がアゲハチョウのようにヒラヒラなびいていた。口紅は真っ赤で、処女の生き血を吸ってきたばかりのパンパイヤのようだ。
本人はいっこう気にしてない様子で、どしんとスツールに腰を下ろすと、すっかりぬるくなってしまったビールを一気に飲み干した。
「どうかしら? 私、女の子に見える?」
「あ・・・き、きれいですよ」
こんな気持ちになったのは、うちのオヤジが近所の奥さんとラブホから出てきたところを目撃して以来だ。

男がコートのポケットに手を突っ込み、中から分厚い札入れを取り出した。
「ママ、すまんけど、この衣装全部、買い取らせてくれんかな」
そういって、カウンターの上に1万円札を3枚置いた。
「そんな、困ります」
「これじゃ足りんか。じゃあ、あと2万出す」
「お金の問題じゃありません。うちの衣装は貸し出し専用なんですよ」
「そこをなんとか、な、たのむ」
さっきの男たちの件といい、この人、なんかワケアリみたい。

「ママ、私からもお願いします。この人の言うとおりにしてあげて」
「なんでひかるちゃんまでそんなこと言うのよ」
「・・・・・」
「ま、しょうがないわね。ただし、このことは誰にも言わないって約束して」
「すまんなママ。感謝する」といって、男が片手を顔の前にかざした。

1万円札を5枚置き、男がコートを持って店を出ようとしたので、あわててあとを追いかけた。店を出たところで、なんとか追いつく。
「もう帰っちゃうんですか」
「ああ、ひかるには世話になったな」
いきなり呼び捨てやし~

「まだ帰らないほうがいいと思いますよ」
「・・・なんで?」
「あなたのことを探してる人が、さっきここにやってきたんです」
とたんに、男の表情が険しくなった。
「どんなヤツやった?」
「スーツを着た男の人がふたり。あなたを写真を見せて、こんなヤツが来えへんかったかって訊いてきました」
「・・・・・」
「まだ、このへんをウロウロしてると思います」

カウンター席に並んで座り、男のグラスにビールを注いであげた。
「はっきりいって、そんなかっこうで外を歩いたら、よけい目立ちますよ」
「そうか・・・これで完ぺきにあいつらの目をごまかせると思ったんやけどな」
「このあと、どうするつもりだったんですか?」
「タクシーで新大阪まで行って、最終の新幹線で東京へ行く」
「こんなところまで探しに来たくらいですから、駅や空港にもあなたを探してる人たちがたくさんいるはずです」
「だから女装したんや。これなら俺やとわかるまいと思ってな」
「・・・間違いなく、イッパツでわかっちゃいますって」
「くそっ、どうすりゃエエんじゃ」
「事情がよくわかんないけど、警察に行ったほうがいいんじゃないですか?」
「そんなことできるかい。冗談やないで」
「でも・・・さっきの人たち、あれはどう見ても」
「余計な詮索するな。ひかるに迷惑かけたくない」
「・・・・・」

ママが怪訝そうな顔でこっちを見てたので、あわてて話題を変えた。
「その映画、たしか勝新太郎が出てたんでしたよね」
「いや、高倉健や。そうか、ひかるもあの映画を観てたのか」
「ヤクザ映画って、けっこう好きなんですよ」
「そんな可愛い顔して、ヤクザ映画が好きなんて言うなよ」
「顔は関係ないですって。あははは」

1時間後、ふたりで店を出た。
ママがいると、込み入った話ができない。

「新幹線は、あきらめたほうがいいです。少なくとも、今夜は」
「そうかもな」
「私と並んで歩いてると、たぶん気づかれないと思います。ひとりだったら目立つけど、私と一緒ならオカマバーの店員か何かと思われるはず」
「とはいえ、こんなところでウロウロしてるわけにもいかん」
「ホテルでしばらく潜伏しておくってのは?」
「そんなことしたら即バレや。あいつらの情報網はあなどれんよってな」
「じゃあ、ラブホは?」
「あかんあかん、たいていのラブホは連中の息がかかってるし、横の繋がりがあるさかい、すでに俺の顔写真が出回ってるはずや」
「・・・サロン、行きます?」
「なんや、それ?」
「マンションの一室を使った女装系のお店です。朝までやってますから、とりあえず今夜はそこで休んで、改めて明日のこと考えたらどうです?」
「近くにあるんか?」
「ここから歩いて10分くらいです」

阪急東通のアーケードと平行に続く裏道を歩いてると、酔っ払いの3人連れが正面から千鳥足で近づいてきた。
「おっ、ねえちゃん。こんなところでふたりして立ちんぼか~」
バーコードヘアを垂らし、酒臭い息を吹きかけてくる。
「おっほっほー、こっちのねえちゃん、めっちゃええ体格しとるのお」
両側のふたりが顔を引きつらせ、「課長、そんなこと言うたら失礼やないですか」といって懸命になだめた。

おそるおそる男のほうを見ると、目をキラキラ輝かせてこう言った。
「いやーん、ひかるちゃん、このおじさまたち怖~い」
うげっ!
私ゃあんたが怖い・・・

JR環状線の高架をくぐったとたん、男が私の肩をペシッとひっぱたいた。
「うひょひょ、この俺が女に見えたらしいぞ」
「そ・・・そうですね」
女に見えたのではなく、オカマに見えたんだと思います。
「ひかるは心配しすぎとちゃうか。これなら新幹線乗ってもバレへんで」
「さっきのおじさんみたいに泥酔してる人ばっかりやったらバレへんかもしれませんけど、あなたを追ってる人たちはおそらくシラフです」

マンションのエレベーターを降りて女装サロンのドアを開けると、平日というのにけっこう賑わっていた。女装さんが3人、男性客が5人。
夏子ママがやってきて、私たちを歓迎する。
「そっちの方は、初めてよね」
「はい、私もさっき知り合ったばかりなんですよ」
「お名前は?」
「え・・・」
そういえば、まだ名前を聞いてなかった。

夏子ママに「明菜」と命名され、男がまんざらでもない表情を浮かべた。
「ふふ、なんか照れくさいもんやな」
並んでソファに腰掛けると、男が・・・明菜さんが、周囲を一瞥した。
「・・・あの」
「ん?」
「足を広げて座るの、やめたほうがいいですよ」
「おっ、すまん」
「それから、その貧乏ゆすりも」
「やだぁ、ごめんなさーい」
うぐっ・・・
こんな気持ちになったのは、イメクラでおかあちゃんより年上の女子高生が出てきたとき以来だ。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/07/24 19:21】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(6)
マイケルジャクソンの死
先日マイケル・ジャクソンさんが亡くなりました。
この人はたしか、肌の色を白くするため危険な投薬を続けていたんですよね。
それが黒人たちの逆鱗に触れ、ひどい嫌がらせを受けたとか。。
反面、お金さえあれば肌の色を白くできるという可能性を示したことで、黒人であることに強いコンプレックスを抱いてる人たちからは支持されています。
よくも悪くも、そんな危険なクスリを我が身を使って試した先駆者であることはたしかです。
p0362.jpg
これって、性同一性障害の問題とどことなく似てません?
黒人であることがイヤでたまらなかったから、外見を白人に似せようとしたんだと思うんです。
肌の色を白くしただけじゃ完全な白人にはなれないのに(骨格や顔つきなどが白人とは根本的に違う)、それでもやっちゃった。。

私のような趣味女装の人は、いってみれば黒人がおしろいを塗って白人になりすましてるようなものかもしれません。クレンジングで洗い落せば、すぐ元の黒人に戻れちゃう。おしろいを塗ってる瞬間だけ、白人をエンジョイできるってワケです。

マイケルが白人になりたがったのは、やはり人種差別のせいでしょう。
でも私は、これに少し疑問を持ってます。
だって、あの有名なマイケル・ジャクソンですよ。いくら肌を白くしたからって、元が黒人だったことは世界中の誰もが知ってるんです。いってみれば肌の白い黒人になったに過ぎません。
それでも、マイケルは危険な投薬に踏み切った・・・

私は、こう考えます。
幼い頃からのトラウマを払拭するため、彼はあの危険な投薬に踏み切ったんじゃないか、って。
あれだけの財をなし、数々の名誉を手に入れ、ネバーランドなんていう自分だけの遊園地まで造っちゃった人です。いまさら人種差別にビクビクする必要などないはずです。その気になれば、白人をアゴで使うこともできる立場にあるんです。なのに、白人になろうとした・・・

マイケルのようにお金があれば、私は性転換していただろうか。
答えは、NOです。
なぜなら、男性である自分に不満を持ってないから。
男性だから、女装を楽しめる♪
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テーマ:ひとりごと - ジャンル:日記

【2009/07/04 01:25】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(2)
桃猫(pink-cat)のお部屋


普段の私は「オトコ」として生活してます。といっても、こんな長い髪してますから、相当怪しいヤツと思われてるかも・・・でもいいんです。そういうの好きだから。

プロフィール

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Author:pink-cat
はじめまして♪
私、桃猫(pink-cat)が書いた小説と写真です。どうかご覧ください。

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