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短編小説『ペガサスの咆哮』
『ペガサスの咆哮』
(※この作品の著作権は、私"桃猫(pink-cat)"に帰属しますので、無断転載等を硬く禁じます)
hikaru1114-1.jpg

駅前のロータリーで待っていると、待ち合わせ時間よりやや遅れて、白いマジェスタがスーッと入ってきた。 長身の男が車を降り、小さく手を上げて私に会釈する。 夕方だというのに真っ黒なレイバンをかけ、ワイシャツの襟をジャケットの上に出し、胸元には金のネックレスが光っていた。
「まあ、乗れや」
「はい」

日中の暖かさも、この時間になるとさすがに冷え込んできて、短パンとタンクトップで来たことをちょっぴり後悔した。
「光と会うのは、何年ぶりやろな」
「・・・5年ぶり、かな?」
「相変わらず女みたいなやっちゃのお」
そういいながら、松岡さんが私のむき出しになった二の腕をぎゅっと掴んできた。

松岡さんは、同じ高校の1年先輩だった。
私が1年のとき、悪友に誘われて近くの喫茶店へ行ったら、そこに松岡さんがいた。 悪友の山根が「松岡さんや。挨拶しとけ」と言ったけども、私は怖くて話すことさえできなかった。 2年生だというのに、うちの高校の不良のアタマで、空手の有段者だということは、入学早々私も耳にしていた。 でも、そんなこと私にはまったく無関係だと思っていた。
山根とつきあい出したのも、クラスのみんなが私を女扱いするから、見返してやろうと思ってのことだった。 華奢な体つきに女のような顔立ち、体毛のほとんどない手足にやや甲高い声。どれをとっても、女扱いされるに十分な要素だった。
でも、山根だけは違っていた。 そんな私をかばい、ひとりの男として接してくれた。
タバコの味を覚え、初めてお酒に酔い、盗んだバイクにまたがり、これまで喋ったことのない乱暴な言葉を発するようになった。 そうすることで、周りの目を変えられると信じていた。 事実、私をからかっていたクラスメートたちは、いつも山根と一緒にいる私に対して、一目置くようになった。 私は、有頂天だった。

「おまえ、ケンカしたことあるか?」
それが、松岡さんが私に話しかけてきた最初の言葉だった。
「いえ、ありません」
「女は?」
「え?」
「セックスしたことあるかって聞いとんじゃ」
「あ・・・ないです」
「そうか」

そのあと、松岡さんと同じクラスの女生徒が喫茶店にやってきて、私は彼女に連れられ、初めてラブホテルというところへ入った。 そして、初体験。
私のものにコンドームをかぶせながら、彼女がこう言った。「あんたって、ホンマに可愛いねえ。私より肌きれいなんとちゃう?」

ケンカにも駆り出された。
といっても、私など戦力の足しにもならない。 いつも松岡さんがピッタリ私の側についていて、殴りかかってくる相手を見事な空手技で一蹴する。 私は、それをじっと見ているだけだった。

ある日、ノートを買いに近所の文房具店へ行ったとき、敵対する高校の不良グループに囲まれた。 あれだけケンカの現場に同行していたのだから、相手も私の顔を覚えている。
公園のトイレに連れ込まれ、さんざん殴られた。 奥歯が折れ、左目が"お岩さん"のように腫れ上がった。口の中が切れ、しばらく熱いものが食べられなかった。

翌日、さっそく松岡さんの復讐が始まり、10人を病院送りにしてしまった。
そして、逮捕。
少年院から戻ってきたのは、半年も経った頃だった。
彼が奇跡的に退学にならなかったのは、私が先にやられていたので、学校側の恩赦を得ることができたからだった。 それでも、半年の空白だけはいかんともしがたく、私が3年になったとき、なんと同じクラスになってしまった。
その頃の私は、もう不良仲間とほとんどつきあいがなかった。 当然のことではあるが、私の両親が彼らとつきあうことを禁止したのだ。 それは学校側やクラスメートたちも同意していて、私が不良仲間と接しようとすると、みんなしてそれを阻止した。 最初の頃は反発していたけれど、みんなが私にとても親切であったことや、山根たちが私を避けるようになったことで、いつの間にか元の"いい子"に戻っていた。

そんなことがあったせいで、同じクラスになりながら、松岡さんとほとんど口を利くことはなかった。 というより、松岡さん自身が、私やみんなと溶け込むのを拒んでいた。
松岡さんのグループは解散同然となり、一匹狼の寂しさをいつも漂わせていた。 でも、誰も話しかけようとしない。当然だ。我が校の伝説と化している"10人斬り"をやってのけた"危険人物"なのだから。

文化祭のとき、私は強引に"女装"させられた。
この学校の恒例行事で"女装美人コンテスト"というのがあり、3年になると、各クラスから代表を1名ずつ出さなければならない。 私は早くから代表になることを周りに勧められていた。
ついにこのときが来たか・・・それが、私の正直な気持ちだった。
3年に進級したとたん、すでに代表は私だと決められていて、コンテストまでは絶対に髪を切らないよう、みんなから強く念を押されていた。 おかげで私の髪はぐんぐん伸び、コンテスト前日にはクラスの女子たちに美容院まで連れて行かれ、完全な女の子の髪型にカットされてしまった。
肩の露出したドレスを着て、ハーフソックスに白いパンプス。女子たちが1時間以上かけて仕上げてくれたメイクは、見事というほかなかった。 結果、他の代表を圧倒的な大差でリードし、"ミス女装コンテスト"グランプリを獲得。 これが、私の人生を大きく変えてしまった。
hikaru1463-1.jpg

文化祭の翌日、近くのCDショップで、松岡さんとばったり出会った。
バツの悪い雰囲気・・・
彼も、CDを買いに来たらしい。

CDショップを出ると、松岡さんのほうから話しかけてきた。
「何、買うたんや?」
「え・・・サザンのニューアルバムですけど」
「おいおい、おまえとは同級生なんや。そんなかしこまった喋り方はやめてくれ」
「けど・・・」
「よかったらそのCD、俺のMDに焼かせてくれへんか」
「いい、ですよ」
「俺の家はこの近くやから、ついでに寄っていけや」
そういえば、私は松岡さんの家がどこにあるのか知らなかった。 たぶん、ケンカ相手から殴り込まれるのを避けるため、秘密にしていたんだろう。

松岡さんは、小さなワンルームマンションでひとり暮らしをしていた。 これにはちょっと驚いた。 高校生がひとり暮らしをするなんて、当時の私には考えられなかったからだ。
「ご両親は、どこに住んでらっしゃるんですか?」
「ここから歩いて10分くらいのところや」
「なんで、ひとり暮らしを?」
「勘当されたんや。少年院にぶち込まれてもうたからな」
「・・・・・」
「まあ、そのぶん気楽にさせてもらってる。毎月、生活費だけは送ってくれよるしな」
「あの・・・それってやっぱり」
「おまえのせいやない。くだらんこと言うな」

男がひとり暮らしすると、こうまで荒廃してしまうのか。
キッチンには汚れた食器が山積みになっていて、床には足の踏み場もないほどいろんなものが散らばっていた。 ひときわ目を引いたのが、ぼろぼろになった空手着と、色褪せた黒い帯。 これだけはちゃんとハンガーにかけられ、カーテンレールに吊るされていた。
「すまんの、汚いやろ」と、松岡さんが照れくさそうに笑った。

仕方なく、私はかろうじて空間が残されていたベッドに腰を降ろした。
落ち着かない様子で、部屋を見回す。
「何か、飲むか?」と、松岡さんが訊いてきた。
「いえ」
「ビールもあるぞ」
大きなゴミ箱に、うずたかく缶ビールの空き缶が積み上げられてあったので、冷蔵庫の中身はだいたい想像できた。
しゅぽっと音を立ててプルトップを引き上げ、松岡さんが美味しそうにビールをごくごく飲んだ。 まだ高校生だというのに、昼間からビールを飲んでるなんて、信じられない。
ふう、と息をつき、手の甲で口についた泡をぬぐい取る。
「ホンマに、いらんのか?」
私は、黙ってこくりとうなづいた。

どしんと私の隣に腰を降ろしてきて、2本目の缶ビールに口をつけた。
「きのうの"女装コンテスト"、おまえ、きれいやったな」
「・・・見てたんですか」
「体育館のいちばんうしろで見てた。おまえが優勝して当然や、これだけ可愛いんやから」
そういって、私の髪を指先でもてあそび始めた。

「光、俺のこと嫌いか?」
「え?」
「長いこと喋ってへんけど、本当の気持ちはどうなんや」
「・・・ボクのために復讐までしてくれて、心から感謝してます」
「感謝なんかどうでもええ。俺が好きか嫌いか、それだけ聞かせてくれ」
「す・・・好き、ですよ」
「ホンマか?」
「はい」

そのままベッドに押し倒された。
手馴れたテクニックで私の全身を愛撫し、蹂躙し、ときには乱暴に、ときには限りなくやさしく、私の中に潜んでいた"女"を目覚めさせていった。
思わず口をついて出てきた"あえぎ声"に、私自身びっくりした。 こんな声が自分の口から出てくるなんて、なんだかとても信じられなかった。
まとわりつくような舌の攻撃に、たまらず彼の口の中で果て、それを彼がごくりと飲み干す。 なんという幸福、なんという高揚感。

射精直後でやたら敏感になっていた肌を、彼のねっとりした舌が這い回る。 その舌がアヌスに達したとき、私の体が大きくのけぞった。 そのままゆっくり両足を持ち上げられ、彼のモノが慎重に、ゆっくり時間をかけ、根元まで挿入されていった。
痛かった。でも、懸命にこらえた。 彼とひとつになれた悦び、そのほうが、全身を貫く痛みをはるかに上回っていた。
乳首を指先で転がしながら、彼のたくましい腰が、私のおしりに規則正しく打ち当てられる。 ふたりとも汗びっしょりになり、緑色のシーツがみるみる変色していった。
いったん抜いたかと思うと、先端だけを残し、そしてまた深々と貫いてくる。それを繰り返されるたび、私の体は貪欲に性の快楽を求めた。 とめどなく出てくる悩ましい嗚咽、その自分自身の声が、私をさらに"女"へと染め上げていった。
突然、彼の動きが烈しくなり、私の両ももをぐっと掴むと、あごから汗をしたたらせながら、彼の喉から野獣のような咆哮が漏れた。 どくん、どくんという感触が肛門から伝わってきて、全身が小刻みにけいれんした。

それからふたりは、深夜までセックスに明け暮れた。 おなかが減るとコンビニへ買い出しに行き、食べ終えるとセックス。 CDを聴きながら、気分が高まってきたらまたセックス。 一緒にシャワーを浴び、彼のたくましい筋肉を感じながら、またセックス。
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卒業までの数ヶ月、ふたりは僅かな時間を惜しんではこっそり会い、貪るようなセックスを繰り返した。 そのたびに私の体は開発され、乳首への愛撫だけでもイッてしまうようになった。 とくに敏感になったのが、二の腕の内側、肉の柔らかな部分だった。 彼が妙にここに固執し、執拗に責めてきたからだ。
「光の腕は最高にきれいや。俺なんかゴツゴツしてゴリラみたいやのに、おまえの腕はつるんと真っ直ぐで、ちっともデコボコがない。そやから俺はここがいちばん好きや」
そういって、しょっちゅうここを犯すものだから、いつも内出血が絶えなかった。 でも、彼のそんな野蛮な愛撫が、私にとってはかけがえのないものだった。

卒業後、私は東京の大学へ行き、彼は父親が経営する建築会社の九州支社へ配属された。 最初のうちは、お互い電話をかけたりメールのやりとりなどをしていたが、盆休みに一度会っただけで、いつしか疎遠になっていった。
私も、東京暮らしにようやく慣れかけてきた頃で、友人に連れられて初めて女装バーへ行き、彼と会った頃にはすっかり女装にハマっていた。 私は、それを彼に黙っていた。 彼以外の男性に愛され、どこへ行ってもチヤホヤされる現状に満足していたからだ。 たぶん彼は、私のそんな変化に気づいていたんだろう。 その翌年の正月に年賀状が届いたのを最後に、彼との連絡はぴたりと途絶えた。

「ふふ・・・おまえの腕の感触、懐かしいなあ」
そういいながら、彼はフロントガラスの向こう側に広がる夜の大阪湾を眺めていた。
あの当時より、彼の手がなんだかゴツゴツしてるように感じた。

「そんな髪型して、会社で怒られたりせえへんのか」
「レコード会社のイベント担当やってますから、そんなうるさく言われないんです」
「まるっきり女やないか。それは言われるやろ」
「ええ。でも、すっとぼけてます」
「はは・・・おまえらしいわ」

遠くのほうで、船の汽笛がかすかに聞こえた。
「俺な、結婚することにしたんや」
「え?」
「もちろん相手はホンマモンの女。オヤジの取引先の娘さんでな、まあ言うてみたら政略結婚みたいなもんや」
「そう、なんですか・・・おめでとうございます」
「ああ」

突然、彼がクルマを降り、並んでいたドラム缶のひとつに強烈な蹴りを食らわした。
ものすごい音がして、蹴られたドラム缶が無残にひしゃげ、がらがらと音を立てて転がった。
何事もなかったように、彼が運転席に戻ってくる。
「ああ、これですっきりした」
「松岡さん・・・」
「俺の人生は、もう俺のもんやない」

エンジンをかけ、バックでターンすると、猛烈なスピードでクルマを走らせた。
思わず足を踏ん張らせ、私は体を硬直させた。

「光、俺の最後のたのみや。今夜セックスさせてくれ」
「・・・え?」
「今夜だけでええ。それっきり、二度とおまえの前に姿を現さん」
「なんで、そんなこと言うんですか」
「俺が好きなのは、おまえだけやからや」

深夜の国道を矢のように駆け抜けると、私たちふたりを乗せたクルマが、真っ白なペガサスになった。 そのままふわりと宙に浮き、月へ向かって飛んでいく。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/01/22 09:06】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1)
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コメント
再会した二人がまた愛を交歓する話に発展させてください。二人とも家族があっても男と女にもどってする、という、さらに興奮する二人であった。なんてね。
by わたる
【2008/07/07 21:45】 URL | wataru #-[ 編集]
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普段の私は「オトコ」として生活してます。といっても、こんな長い髪してますから、相当怪しいヤツと思われてるかも・・・でもいいんです。そういうの好きだから。

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