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連載小説【走れエロス】2/8
私はビールを、明菜さんはウイスキーの水割りを注文した。
マンションのリビングルームにあたるところが談話室になっており、中央に配されたガラストップのテーブルを囲むようにしてソファが置かれている。私たちはバルコニーを背にしたソファを陣取り、その両側では、女装さんと男性のカップルが互いを意識しながらイチャついていた。正面には、肉付きのいい女装さんがぽつんとひとりで座ってる。

「なあひかる、あのデブより俺のほうがずっときれいやと思わんか?」
「ちょっ・・・やめてくださいよ」
「左の女装も、ヒョットコみたいな顔してやがら」
「あのねえ」
「右側の女装もひどいね。まず服のセンスがなってねえな」
どんだけ自信過剰なんスか!

そこに、50過ぎの長身男性が缶ビール片手にやってきて、明菜さんの隣に腰を降ろした。
「女同士で楽しそうやね。ぼくはヤマモト、みんなからはヤマさんって呼ばれてる。そっちの彼女はたしか・・・ひかるちゃんって言うたっけ」
「あ、はいそうです」
「2ヶ月くらい前にここで会ったこと、覚えてる?」
忘れもしない、2ヶ月前。
私がある男性と意気投合し、隣のいわゆる「ヤリ部屋」に行ったら、あとからこの男性がやってきて、無理やり3Pプレイに持ち込んだ。気の弱い最初の男性は薄笑いを浮かべながらこの男の下僕のごとく動き回り、結局2番目に甘んじた。最初に誘ったのはこの人なのに、デリカシーに欠けるというかジコチューというか、とにかくこの一件があって以来、私はこの店に来ないようにしていた。

「きみは、ここに来るのが初めてらしいね」
「ん? まあな」と、明菜さんがぶっきらぼうに答える。
「女装を始めたのは、最近?」
「今日が初めてや」
「ほほお・・・ってことは、まだ手つかずってわけか」
明菜さんが、キョトンとしてる。
「手つかずっちゅうのは、どういう意味や?」
「そりゃあ、アレに決まってるがな」
「ははあ・・・おいひかる、このおっさん、俺とスケベする気らしいで」と、耳元で囁いてきた。
こんな気持ちになったのは、うちのおかあちゃんが近所の奥さんの家に怒鳴り込むところを目撃して以来だ。

「ごめんなさ~い、私、男性とエッチする趣味はありませんのよ、オホホ」
「そうか。まあ、そんな子もいるからな。残念やけどあきらめるか」
「代わりに、ひかるちゃんを可愛がってやってくださいな」
こ・・・こらこら!
「そうさせてもらうか。ひかるちゃん、こっちおいで」
強引に手を引っ張り、ヤマさんが自分のひざの上に私を座らせた。
「相変わらずきれいやなあ。この白い太もも、たまらんわ」
かさついた手が、スカートの中を這い回る。
明菜さんのほうをチラッと見ると、あさっての方角を向いて、のんびりタバコをくゆらせていた。

「あの、今日はダメなんです」
「なんでや?」
「明菜さんをエスコートせんとアカンし」
「ほんなら、ふたり一緒に可愛がったげるがな。さ、隣の部屋に行こ」
そういって明菜さんのコートを持って立ち上がろうとしたとたん、いきなり明菜さんがヤマさんの胸倉を掴み、ものすごい形相で睨みつけた。
「触るな」
「あ・・・いや、ぼくはただ、コートを持っていってあげようかと」
「ええか、何度も言わせるなよ。これに触るな」
「・・・わかった」

ヤマさんが帰ったあと、明菜さんは眠くなってきたのか、ソファでウツラウツラと舟を漕ぎ始めた。
「明菜さん、こんなトコで寝たら風邪ひいちゃいますって。隣の部屋、誰も使ってないみたいやから、そこでちょっと横になったらどうです?」
「そうやな、そうさせてもらうか」
コートをしっかり握りしめ、明菜さんが隣の部屋へ消えていった。

さて、私はどうする?
時計を見ると、午前2時を少し回ったところ。
明日・・・というか、今日も仕事だから、そろそろ帰りたい。でも、このまま明菜さんを放って帰るのもなんだか気が引ける。というか気になって仕方ない。あんな物騒な連中が明菜さんを探し回っていたのだ。このまま帰って、明菜さんに何かあったら責任を感じる。

談話室を出て、パソコンをいじっていた夏子さんに声をかけた。
「夏子さん」
「何?」
「お願いがあるんです」
「?」
「明菜さんを、明日の夜まで泊らせてあげられないでしょうか」
丸一日、姿をくらましていれば、明菜さんを探していた連中があきらめるかもしれない。完全ではないにしても、今より手薄になるのは間違いない。
私は会社に行き、帰りに明菜さんにぴったりな洋服を買ってここに戻ってくる。できるだけ目立たない、シンプルな服がいい。レディースのサングラスも買っておこう。それなら新幹線に乗っても簡単にはバレないだろう。

「困ったわねえ、私も後片づけが済んだら家に帰らなきゃいけないし」
「あの人、なんかワケアリみたいなんですよ。よくはわからないけど、見つかったらひどい目に遭わされると思うんです」
「見つかったらって、誰に?」
「たぶん、ヤのつく人」
「ちょっとぉ、冗談やないわ。そんな厄介なことに巻き込まないでよ」
こりゃ、ヤブヘビだったか・・・

「ひかるちゃんには悪いけど、すぐ出てってもらうわ」
「そ・・・そんな」
「こんなこと言いたくないよ。でも、他のお客さんに迷惑かけるわけにいかないでしょ。私の立場からは、そう言うしかないのよ。わかってちょうだい」
たしかに、夏子ママの言うとおりだ。

そのとき、ヤリ部屋から女装さんと男性のカップルが出てきた。
あれ? 誰も使ってないと思ってたのに・・・
談話室を見ると、右側のソファがカラッポになってる。どうやら私が夏子さんと喋ってる間に入ったらしい。
男性のほうが夏子ママのところにやってきて、こう耳打ちした。
「あの女装さん、背中に刺青あったで。あんなん店に入れたらアカンわ」

ヤリ部屋に入ると、明菜さんが下着姿のまま、布団の上であぐらをかいていた。しっかりコートを握りしめながら。
「はは、あいつら、俺の彫物見て目ェ白黒させとったわ」
「明菜さん、ちょっと言いにくいんですけど」
「わかってる。出ていけって言われたんやろ?」
「・・・・・」
「ま、しゃあないわ。極道モンは、どこ行っても嫌われる運命やからの」
p0068.jpg
外に出ると、小雨が降っていた。
「ひかるはもう帰れ。あとは俺がなんとかする」
「なんとかするって、どうするつもり?」
「とにかく腹が減った。牛丼でも食って、タクシーで新大阪まで行くか」
「でも、始発までだいぶ時間ありますよ」
「コンビニで立ち読みでもしてるさ」
「私も、牛丼つきあいます」
「やめとけ。もし何かあったら、おまえもタダじゃ済まん」
「私と一緒にいるほうが絶対目立ちません。それに、私もお腹ペコペコやし」
「・・・わかったわかった。けど、牛丼食ったらすぐ帰るんやぞ」

牛丼屋に入ると、思いっきり店員と客たちからガン見された。そりゃそうだ、筋肉ムキムキの女装さんと、パンツが見えそうなほど短いスカートを穿いた女装さんが入ってきたんだから。
明菜さんをいちばん奥の席に座らせ、私はその隣に腰掛けた。明菜さんがぎろりと視線を走らせると、とたんにみんな目を逸らした。

「ひとつ、質問していいですか?」
「内容による」
「女装バーに入ってきたとき、あそこがそういうお店だってことを知ってるって言いましたよね。なんで知ってたんですか?」
「あのビルのスナックに知り合いの女がいて、そいつから聞いたんや」
「もうひとつ。なんで追いかけられてるんですか?」
「それには、答えられんな」
「捕まったら、明菜さんはどうなるの?」
「それも、黙秘権ってのを使わせてもらおか」
「・・・・・」
「余計な詮索はせんほうがいい。俺はおまえのことが心配なんや」

牛丼が運ばれてきて、割り箸をつかんだそのとき、見覚えのあるふたりが店内に入ってきた。
「ヤス、おもろいかっこうしとるやないけ」
「ちょっと待ってくれんか。まだひと口も食うてへんのや」
「ああ。しっかり味わって食えよ」
ガラス戸の向こうに、黒いベンツが停まっていた。

店員が青ざめた顔で厨房に引っ込み、牛丼を掻き込んでいた客たちが半泣きで箸を置くと、すごすご店を出ていった。
「ヤス、時間切れや。さっきの客がポリにチクるかもしれんでの」
「まだちょっとしか食うてへん。最後の晩餐くらい、ゆっくり食わせろや」
「そっちのオカマちゃんも、一緒に来てもらうで」
「こいつは関係あらへん。何も知らんのや。ウソやない」
「ほお、えらいかばうやないけ。おまえにそんな趣味があったとは知らんかったで。こいつのケツに真珠入りマグナムをぶち込んだか、あ?」
「そんなんやない。なあ後生や、こいつだけは見逃したってくれ。たのむ」
「ねえちゃんも、えらい厄病神に憑りつかれたもんやなあ。まあこれも災難やと思て、おとなしゅうついて来てもらおか」

刹那、明菜さんが熱いお茶を傍らの男の顔にぶっかけ、もうひとりの男の鼻に強烈な頭突きを食らわした。すかさずカウンターを飛び越え、私を持ち上げてカウンター内に引きずり込んだ。厨房を抜け、裏口のドアを蹴破って表に出る。
「くそっ、なんちゅう走りにくい靴じゃ」
脱いでるヒマはない。そのままふたりで駐車場を横切り、住宅街に続く道を懸命に駆けた。背後から「待たんかい!」という怒鳴り声。
「明菜さん、コートは」
「そんなん、どうでもええ。とにかく走れ!」

あれだけ大事にしていたコートを見捨ててまで私を逃がそうとしてくれたことに、なんだか胸がジーンとなった。
「ひかる、こっちや」
人ひとりがやっと通れるほどのビルの隙間に逃げ込む。
うしろを見ると、男たちが一列になって路地に入ってくるところだった。
「ここであいつらを食い止める、その間に逃げろ」
「そんなん・・・いやです」
「グダグタ言うてんと、さっさと逃げんかい!」
「けど・・・明菜さんが」
「たのむ、逃げてくれ。後生や」
ワンピースを引き裂き、ブラジャーの中からナイフを取り出した。
「そう簡単に捕まってたまるかい。もし逃げおおせたら、あの女装バーで落ち合おう」
「でも」
「早よ行け!」
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/07/31 22:41】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2)
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コメント
ひかるの女っぽさが浮かび上がってきてます。嫌な奴に弄ばれるところもそそられます。
もとろんストーリーも面白いですよ~次の展開が楽しみです。
【2009/08/01 22:59】 URL | えいいち #-[ 編集]
えいいちさん、いつもありがとう。
全部で8話ありますので、また読んでくださいね。
【2009/08/02 19:12】 URL | pink-cat #lN14HRyQ[ 編集]
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