FC2ブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告
連載小説【走れエロス】8/8
エレベーターの扉が開くと、髭男爵が店の前に立っていた。
「店には入れるな。客が動揺する」
「じゃあ、どうします?」
髭男爵がズボンのポケットからキーを取り出し、セイジに投げ渡す。
「トランクに放り込んでおけ」

再びエレベーターに乗せられ、背後からナイフを突きつけられる。
「ちょっとでもヘンな動きしたら、これでブスッといくぞ」
勝ち誇ったように、セイジが前に回ってきて、私の髪をグイッとつかんだ。
「さっきはふざけたこと抜かしてくれよったな。誰が女装したいって? あ?」
セイジの耳に、ピアスが光っていた。
「俺には女が3人もいてる。みんな俺のイチモツが欲しゅうて、ケツ振りながらおねだりしよるんや。そんな俺が、女装なんかに興味あるわけないやろ」
うしろのひとりが、それを聞いてクスッと笑った。
「おまえの女っちゅうても、ソープ嬢とかキャバ嬢ばっかりやないか」
「・・・なんやとコラ、もういっぺん言うてみい」
尋常でない目つきで、セイジが背後の男を睨みつける。
「じ・・・冗談やんけ。マジになるなや」
不穏なムードが漂い、エレベーター内が息苦しい沈黙に包まれた。

エレベーターを出ると、ビルの裏手にある駐車場へ向かい、セイジがそこに停めてあったクラウンのトランクを開けた。
「入れ」
「・・・どこ、行くの?」
「さあな、俺も知らん。けど、地獄であることだけはたしかや」

そこに、シンヤがぬっと現れた。怒りで、鬼のような形相になっている。
「おんどれら、ひかるを放せ」
「シンヤくん! こいつら、ナイフ持ってるから気をつけて」
前のふたりがナイフをかざし、シンヤを取り囲むようにゆっくり移動する。セイジが私の髪をつかみ、首筋にぴたっとナイフを押しあててきた。
「ナイフやったら、俺も持ってるで」
シンヤが薄笑いを浮かべ、ジーンズの尻ポケットからバタフライナイフを取り出し、器用に刃を開いて見せた。
「バカな真似はやめて。3人相手に勝てるわけないでしょ」
「ンなもん、やってみんとわかるかい」
「あほ! カッコつけてる場合か! それより早よ警察呼んできて」
「俺は、ポリとヤクザが大嫌いなんじゃ」
なんでこう、血の気の多い連中ばっかりやねん・・・

そのときだ。
髭男爵が拳銃を構え、ワゴン車の陰からひょっこり出てきた。
「兄ちゃん、ヤッパ捨てろや」
「ちぇっ、飛び道具とは卑怯なりぃ、ってか」
ナイフを、足元にぽとりと落とす。すかさずウエイターがそれを拾い上げた。

「ふん、ええ度胸しとるやないか」と、髭男爵がにやりと笑う。
「こう見えても族のアタマ張ってるからな。こんなんでビビってたら、気性の烈しい族の連中に示しがつかん」
「どうせ誰も見てへんのや。そこに手ェついて詫びを入れたら、おまえだけは許してやってもええぞ」
「けっ、冗談は顔だけにしとけや。誰がおんどれなんかに頭下げるかい」
「そうか、ほな死ねや」
「おーっと。その前に、周りをよう見てみろ」
シンヤが指笛を鳴らすと、いっせいにバイクの轟音が響き、強烈なヘッドライトが次々に点灯した。まぶしくて目が開けていられない。
「飛び道具を持ってるのは、何もおっさんだけやないで。俺の仲間が、あんたの心臓に狙いをつけてる。命が惜しかったらチャカ捨てんかい」
「そんなこけおどしが通じるとでも思ってんのか」
「あ、そ。ほんなら証拠見せたる。おーいタカ、チャカ1丁持ってきてくれや」
ひとりが歩いてきて、シンヤに何かを手渡した。
「いまどきの族はチャカくらい持ってるで。まあ、めったに使わんけどな」
グッと拳銃を突き出し、髭男爵の頭部に狙いを定めた。
「わ・・・わかった。銃を捨てる」

シンヤが歩いてきて、セイジをぎろりと睨みつけた。
「おまえ、さっきひかるを殴ったやろ。ちゃんと見とったんやで」
「・・・・・」
「抵抗できんやつしか殴られへんヘタレが」
ドスッとシンヤの拳がみぞおちにめり込み、セイジの目がくるりと裏返った。
「ほな行こか」
「うん・・・」
「どうした?」
ふてくされたような顔で突っ立っている髭男爵のほうを見た。
「秘密クラブで働くのを断っただけやのに、なんで殺そうとしたんですか」
「おまえが、大御所を怒らせたからや」
「たったそれだけの理由で?」
「おまえは、大御所の逆鱗に触れるようなことをしでかした」
「断っただけで逆鱗に触れるなんて、そんなムチャクチャな話ってある?」
「そうやない。うちのチーフと大御所は古くからの恋仲なんや。そのチーフが大御所に直訴した。俺がおまえをシャンゼリゼに入れようと企ててるから、なんとかそれをやめさせてほしいってな。ところがこれが見事に逆効果。大御所はおまえに烈しく嫉妬した。それで、おまえをなんとかシャンゼリゼに引き込み、言いがかりをつけて始末するつもりが、おまえがあっさり断ったもんやから話がややこしくなってしまった」
「・・・・・」
「さっきチーフが、わざとおまえを逃がそうとしてるのを見て問いただしたんや。あんな猿芝居、誰が見てもわかるからな。それで真相を知った」
「・・・チーフは、なんで私が秘密クラブに入るのを阻止しようとしたの?」
「一度入ったら、死ぬまで出てこれんからや」
「そんな、アホな」
「当たり前やろ。秘密厳守が売り物のクラブなんやぞ。男娼どもがホイホイ外出しとったら、顧客なんかひとりもおらんようになってしまうわ」
「じゃあ、年収1千万ってのは」
「有能な人材にだけ、ある程度の自由が与えられる。俺は、おまえがその適任者と睨んだ。その場合、もちろん報酬は支払われる」
「私に、何をさせるつもりやったん?」
「簡単にいうとスカウトやな。顧客の要望を聞いて、ぴったりの人材を全国から探してくる。おまえには、なぜか人を引きつける力がある。それを最大限に生かせば、シャンゼリゼの幹部として一定の地位を築ける」
「どっかのテロ支援国家やあるまいし、誰がそんなこと引き受けるか!」
「その場合は、死ぬまで顧客の慰み者として働いてもらうだけや」
「・・・やっぱりヤクザなんて、クズの集まりやね」
「違うな。俺らはただ、世の中のニーズに応えてるだけや。言い換えれば、世の中が俺らを必要としてる。つまり、クズは世の中のほうなんじゃ」
「そんなの詭弁や」
「まあ、今となってはそんなことどうでもええ。もうおまえとは二度と会うこともないやろう」

「行こう」といって、シンヤが私の肩に手を載せてきた。
「今日限りで、うちのグループは解散する。いつまでもこんなアホなことやってられんからな」
「解散って・・・ホンマにできるの? 拳銃まで持ってるのに」
「ああ、これか? よう見てみい。サバイバルゲーム用のエアガンや」
「・・・こんなもんで、本物のピストルに対抗したわけ?」
「バイクのハイビーム受けてたから、あいつらにはこれがオモチャのピストルってことはわからん。そこまで考えての行動や」
「賢いのかアホなのか、ようわからん」
「結果オーライじゃ。たまにゃこんな大バクチ打たなアカンときもあるわい」
hikaru3181-1.jpg
翌週、ルミ子ママのお店へ行くと、顔中に絆創膏を貼りつけたシンヤくんがスツールに座っていた。
「なんで、ここがわかったん!」
「ネカフェで女装関係のサイトを片っ端から検索してたら、この店の掲示板におまえの名前が載ってた」
「・・・その怪我は、どうしたん?」
「族を解散したんや。アタマとして、ケジメだけはつけとかんとな」

奥の更衣室から、とびっきり派手な衣装とメイクの明菜さんが出てきた。
「あ~らひかるちゃん、会いたかったわ」
「げっ!」
「ん? こっちのイカすお兄さんは?」
「あ・・・ああ。私のお友だち、シンヤくんです」
「いい男ねえ。私にも紹介してよ」
ヤクザに拳銃やナイフを突きつけられても動じなかったシンヤくんが、隣で完全に血の気を失っていた。

ふと見ると、カウンターの端っこに大きな花束が置いてある。
「ママ、今日は誰かの誕生日?」
「それが私にもようわからんのよ。さっき宅配の人が届けてくれたんやけど、差出人を見ても大御所としか書いてないし・・・きっと誰かのイタズラやね」
それを聞いて、私とシンヤくんが同時に固まった。

「大御所って、もしかして」と、明菜さんが怪訝そうな表情を浮かべた。
「さ、そんなことどうでもいいから、3人で乾杯しましょ」
かちんとグラスを鳴らし、ビールをひと口飲む。緊張していたせいか、なかなかビールが喉を通らなかった。

そこに、常連の女装さんが入ってきた。
「ひかるちゃん、おひさしぶり。先週来てたんやってね」
いちばん手前のスツールに座り、シンヤくんと明菜さんをチラチラ見てる。
「あら? ママ、その花束どうしたの?」
「ああ、これね。誰かのイタズラちゃうかって今話してたトコなんよ」
「そんな花、よう見つけてきたもんやわ」
「どういう意味?」とママ。
「濃い赤色のバラなんて、普通の花屋さんじゃ扱ってないもの」
「・・・・・」
「そのバラの花言葉はね、死ぬまで憎みます、よ」
「それホンマ? くそ・・・なんちゅう縁起の悪いイタズラしやがるんや」
ママがバラの花束をつかみ、ゴミ箱に放り込もうとして、一瞬手を止めた。花瓶から引き抜いたバラの花束から、赤い水がしたたっていた。束ねていたひもをほどき、おそるおそるカウンターに広げる。
ころん、と人間の指が出てきた。
「うわっ!」

明菜さんが白くふやけた指をつまみ上げ、丹念に眺め回す。
「これは、男の指やな。しかも、かなりでかいやつや」
心当たりは、ただひとり。
「ママ、配達人はどんなヤツやった?」
「・・・そういえば、宅配の人には見えんかったな。黒いスーツを着た若い男の人で、あ、そうそう、耳に金のピアスしとったわ」
「受け取り伝票、ちょっと見せてくれへんか」
「ここにあるけど・・・とにかく、早よそんなもん捨ててきてほしいわ」
それを無視し、明菜さんが受け取り伝票をじっくり調べる。

「店名と住所、それと差出人欄に大御所と書かれてるだけや。いや待てよ、裏側にちっちゃい字で何か書いてある。ええっと・・・ひ・か・・・」
読み上げるのを中止し、そのまま自分のバッグにしまい込んだ。
「明菜ちゃん、何が書いてあったの?」と、ママ。
「いや、何も書いてへんかった。こんな縁起でもないもん、早よ始末しとこ。俺が外のゴミ箱に捨ててきたるわ」
「明菜ちゃん、俺なんて言うたらアカンでしょ。けど、冷静に考えたら、やっぱり警察に連絡したほうがええかな」
「ポリなんか呼んだら根掘り葉掘り聞かれるで。それでもいいならどうぞ」
「・・・それはちょっと面倒やな。わかった、捨ててきて」

おしぼりで指をくるみ、明菜さんが立ち上がったので、私も一緒に立ち上がった。シンヤくんも同時に立ち上がる。
エレベーターの中で、3人とも無言だった。
1階に着いて出ようとすると、すかさず明菜さんが私たちを制止した。
「ここにいろ。俺が様子を見てくる」
10秒ほどして、明菜さんが戻ってきた。「ええぞ」

ビルの横にある大きなゴミ箱に、明菜さんがおしぼりを投げ入れた。
「さっきの紙、なんて書かれてあったんですか」
「・・・見んほうがええ」
「見せてください」
渋々、明菜さんが受け取り伝票を差し出す。
ひっくり返すと、下のほうに小さな文字でこう書かれていた。
《ひかるに黒薔薇の接吻を》
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/09/13 15:23】 | 小説 | トラックバック(1) | コメント(1)
<<初めての法要 | ホーム | 連載小説【走れエロス】7/8>>
コメント
このコメントは管理者の承認待ちです
【2010/06/12 04:12】 | #[ 編集]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://pinkcat1009.blog22.fc2.com/tb.php/27-bc4d4817
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
「エロス」について
「エロス」について関連の記事。 関連記事【2009/09/13 16:20】
桃猫(pink-cat)のお部屋


普段の私は「オトコ」として生活してます。といっても、こんな長い髪してますから、相当怪しいヤツと思われてるかも・・・でもいいんです。そういうの好きだから。

プロフィール

pink-cat

Author:pink-cat
はじめまして♪
私、桃猫(pink-cat)が書いた小説と写真です。どうかご覧ください。

最近の記事

カレンダー

08 | 2018/09 | 10
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

FC2カウンター

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。