スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告
短編小説『光くんの受難』
『光くんの受難』
(※この作品の著作権は、私"桃猫(pink-cat)"に帰属しますので、無断転載等を硬く禁じます)
hikaru2422-1.jpg

「お、ここやここ!」
ずんぐりした体型の松っつんが、8年落ちカローラのハンドルを握りながらツバを飛ばし飛ばし叫んだ。 「このビルの3階らしい。ヨメはんの友だちが言うとった」

松っつんとは高校からの親友で、俺が女装してることを打ち明けたのがそもそも間違いのはじまりや。 最初のうちは理解を示してくれてたんやけど、そのうちだんだん頭に乗ってきて、黙っといたるから牛丼おごれとか、いっぺんヤラせろとか、無理難題ばっかり押しつけるようになってきよった。 こうなったら首でも絞めて大阪湾に捨てたろかとも思ったけど、けっこう助けてもらうこともあって、こうして腐れ縁が続いてるっちゅうわけや。

「ええか光、なるべく声は出すな」
「アホか、それやったらおまえのヨメはんのこと訊き出されへんやないか」
「そりゃそうやけど・・・とにかく男とバレんようにしてくれ」
あ~あ、なんで俺がこんなことせなアカンねん。

松っつんのヨメはんがホストクラブにのめり込んでしまい、気がついたら預金残高はゼロ、おまけに30年ローンで買ったマンションは管財人に差し押さえられ、肝心のヨメはんはというと、半月前から姿を消してるっちゅうありさまや。
気の毒というか、アホというか・・・
こうなる前に、なんでもっと早く気ィつけへんかったんやろって思う。

「俺じゃホストクラブに入っていけん。光、おまえだけが頼りなんや」
「けどなあ、俺は趣味で女装してるだけで、チンチンついとるし、おっぱいもペチャンコなんやで」
「そやから、わざわざ2万も払って本格的に女装してもらったんやないか」
「まあ、たしかにあそこのメイクはたいしたもんや。自分でもびっくりするほどキレイになっとる」
「あとはおまえ次第や。その言葉遣い、間違ってもホストクラブで出すなよ」
あーだこーだ、うるさいやっちゃで。

エレベーターのドアが開くと、数人のホストが丁重にお出迎えしてくれた。
「いらっしゃいませ~~~!」
「あの、友だちの紹介で来たんですけど」
「初めてですか、ようこそおいでくださりました。ささ、どうぞ」

ふーん、これがホストクラブか。
広い店内に豪華な内装、奥のほうにシャンパングラスがピラミッドみたいに積み上げられてて、それが下からきれいにライトアップされてる。 ホストは見たトコ10人程度、お客は若い女性ばかり15人ほどいるようや。 もっとオバハンばっかりかと思ってたのに、けっこう若くてきれいなネーチャンが多いんやなあ。

「こちらのボックスへどうぞ」といって、ワカメみたいな髪をしたホストが奥の席へ案内してくれた。 とたんに両側からイケメンのニーチャンがでんと腰を降ろす。 ううっ、なんか緊張してきた。
「お飲み物は何になさいます?」
松っつんから貰った軍資金が20万ほどあるし、ここは遠慮なくオーダーしてやるか。
「じゃあターキーを水割りで」
「・・・なんか、男みたいなオーダーするんやね」
しまった。

「あはは、面白い人やなあ。名前、何て言うの?」と、ワカメ頭。
「ヒカルといいます」
「ヒカルちゃんか、可愛い名前やね」
すかさず写真つきの名刺を手渡された。どれどれ、ワカメ頭はkazuくんで、反対側の下膨れはtakuyaくんか。
なァにがタクヤくんじゃい、タクアンみたいな顔しくさってからに。

「ヒカルちゃんって、めっちゃキレイな足してるね」
「まあ、ありがと」
「ちょっと声が低いけど、風邪でもひいてんの?」
「ごほっ、ごほっ」
おっと、こんなことしてる場合やない。早よ本題に入って、さっさとこんなトコ出たろ。

「あのね、このお店のナンバーワン、hideさんって、どの人?」
「隣のボックスにいてはりますよ。なんやったら呼んだけましょか」
「お願い」
hideっちゅうヤツにほだされて大金つぎ込んだと松っつんから聞いてたから、そいつやったら松っつんのヨメはんの居所を知ってるかもしれん。

ほどなく、隣のボックスからひときわ美形のホストがやってきて、俺の正面に座った。
「ここ、初めてなんやってね」
「うん、ユキちゃんって子に聞いて来てん」
「ユキちゃん?」
「ほら、松田由紀って子、覚えてへん?」
「ああ、彼女のお友だちですか」
「最近来てる?」
「そういえば、ここ一ヶ月ほど顔を見てませんね」
おうおう、しらばっくれてからに。数千万も貢いだ相手をそう簡単に忘れるわけないやろ。

「そうやねん。最近彼女の姿を見ィひんねんけど、何か心当たりない?」
「さあ・・・お客さんは他にもいっぱいいてますし」
「けどなあ、由紀ちゃんのご家族も心配してはるんや。ちょっとでもええねん、由紀ちゃんが行きそうなトコ、教えてくれんやろか」
「・・・ヒカルさんって、何か男みたいな喋り方するんやね」
あらら、またやってもうた。

「とにかく、彼女のことは何も知りません。別のお客様を待たせてるんで、俺はこのへんで」
そういって、さっさと席を立ってしまった。
くそう、これじゃ埒が明かん。
hikaru2407-1.jpg

「あんた、hideくんをいきなり呼びつけたりして、いったいどういうつもり?」
隣のボックスから、根性悪そうな女が話しかけてきた。
「ここはあんたみたいなチンケな女が来るトコちゃうねん。わかったらさっさと出て行って、残飯でも漁っとき」
あっはははと取り巻きの女どもが笑う。
くそ、ムカツク女や。

思いっきり皮肉混じりに言うたった。
「あれえ? ここはメスブタにお酒飲ませるんやあ。飼育係のオニイサンたちも大変やねえ」
「な・・・なんやとお!」
「ん? 何か言いました? 私にはブヒブヒとしか聞こえへんかったけど」
周りにいたホストくんたちの顔が真っ青になった。

「それじゃ私は先に失礼させてもらいますワ。メスブタちゃん、あまり飲みすぎて周りに迷惑かけんようにね」
勘定を済ませ、店を出ようとしたら、思いっきりズッデーンと転んでしまった。
このアマ、わざと足出しよったな。

「ぶわっははは、みっじめ~」といって、メスブタがケラケラ笑う。
「・・・このやろ」
「なんやこいつ、男みたいな喋り方しよるわ。もしかしてニューハーフとちゃうか、ウケケケ」
脱げたハイヒールを拾い上げると、片方のかかとがポッキリ折れてた。
「んぎゃ~~~っははは、かかとが折れてる~~~」
ちくしょう、どうしてくれようか。

「ありがとね、これで歩きやすうなったわ。私は足が長いからこれでちょうどいいねん。そっちの豚足さんは四足で歩かなアカンから大変やねえ」
「な・・・」
「ホストのニイチャンたち、このオバチャンの介護よろしくね。間違っても食べたらアカンよ~、こんな肉食うたら間違いなく腸ねん転起こすから」
「ち・・・ちょっと待ちいや!」
「まァたブヒブヒ言うてる。私、ブタ語わっかんな~い」
店内に、クスクス笑い声が広がった。

裸足のまま店を出ると、ケータイで松っつんに電話をかけた。
「もしもーし、今どこ?」
『腹減ったから、近くのファミレスでメシ食っとる』
「悪いけど、由紀ちゃんの居場所、聞き出せんかったわ」
『え? もう出てきたんか?』
「早よ迎えに来てえな、俺も腹減った」
『そんなこと言うても、まさかこんな早く出てくるとは思わんかったからなあ。あと20分くらいしたら迎えに行くから、そのへんで待っといて』

電話を切ると同時に、うしろからケータイをサッと取り上げられた。
「あっ、何する!」
「ちょっとつきおうてんか」
さっきの豚足やった。 うしろには、取り巻きの女が2人。
いくら3人やいうても、相手はたかが女。さっきの恨みを晴らすのにちょうどいいかも。
「おう、どこへでもつきあったろやないか」

ほどなくすると、真っ黒なベンツがやってきて、そこからガラの悪そうな男が2人降りてきた。
「マサ、リョウ、こいつをちょっと揉んだって」
「お嬢さん、どないしはったんですか」
「エエから、あんたらは私の言うとおりにしとったらええの!」
男たちにむんずと腕を掴まれ、後部座席へ放り込まれた。 イタチみたいな顔した男が、俺の手首に手錠をかける。
「な、何を!」
助手席にお嬢様が乗り込んできて、俺のほうを見てニタリと笑った。
「ええトコ連れてったる。一生忘れられへん夜になるわよ~」
くそっ、くやしいなあ。

目隠しをされたままベンツから引きずり出されると、かすかに潮の香りがした。
数百メートル歩いたところで、急にふわりと体を持ち上げられた。 波の打ち寄せる音・・・もしかして、船の中?
エンジンのかかる音がして、船体が大きくぐらりと揺れた。
hikaru1171-1.jpg

ここでようやく目隠しを外された。
「どうや、豪華クルーザーの乗り心地は」
「これ、あんたの?」
「まあね」
「ふーん」
「あんた・・・ちっともビビってる様子がないね」
「そうかな」
「今からこいつらに犯されるんよ、オヨメに行けないカラダになるんよ」
「その点はご心配なく。私、男やから」
「な・・・」
「お察しのとおり、オカマちゃん」

アンパンマンみたいな顔の男が、目をパチクリさせて、俺をまじまじ見つめてきた。
「お・・・おまえ、ホンマに男か?」
「証拠見せたげよか」
「おいリョウ、リョウ!」
操縦席から、リョウと呼ばれた男が降りてきた。
「こいつ、男やって」
「マジで?」
イタチみたいな顔が、こっけいなほどだらんとなった。

「お嬢さん、話が違いますやん」と、イタチくん。
「そんなこと言うたかって・・・私もわからんかってんもん」
「どないしますの」と、アンパンマン。
「・・・男やろうが何やろうが、犯したったらエエやんか」
「冗談やないですわ、俺ら、そんな趣味あらへん」
ウププ・・・なんか、笑える。

お嬢さんが俺の横にやってきて、いきなりオッパイをムギュッと掴んできた。
「これ・・・ニセモノ?」
「うん、ヌーブラ」
次いで、スカートの中に手を突っ込んできた。
「・・・あ・・・あ」といって、お嬢さんの顔がみるみる真っ白になっていく。
「いやん、恥ずかしい」

イタチくんがクスクス笑い出し、アンパンマンも釣られて失笑した。
「ヘンなヤツ~」
「あーっははは、ホンマや」
ポカンとしてたお嬢さんまで、とうとう笑い出した。

「あんた、なんでそんなカッコウしてホストクラブなんか行ってたんよ」
「俺の友だちの奥さんが行方不明になってな、そいつに頼まれて情報集めしてたんや」
「その奥さんの名前って?」
「松田由紀」
「ああ、由紀ちゃんなら知ってる。あの店で、一時期すっごく派手にお金使ってたからな」
「知ってるの?」
「うん。たしか、マリちゃんと仲が良かったはずやで」
「誰? そのマリちゃんって」
「セクキャバで働いてる子。あそこに来るお客の大半はフーゾク嬢やねん」
「へえ・・・あんたもそうなん?」
「私はれっきとした社長令嬢や。あんな子らと一緒にせんとって」
「けど、やってることはおんなじやん」
「私は暇つぶしにちょっと遊んでやってるだけ。あいつらみたいに身銭切って男に貢ぐようなアホなことはせえへんの」
・・・おんなじやと思うけどなあ。

「とにかく、そのマリちゃんって子に聞いたら、由紀ちゃんの居所はわかるんやね」
「それはマリちゃんに聞いてみんことには」
「じゃあさっそく聞いてよ」
「あんた、自分の置かれてる立場わかってる?」
「何が?」
「・・・もうエエわ、なんかアホらしくなってきた」

お嬢さんが電話かけてる間、イタチとアンパンマンの話し相手になってやった。
「なあなあ、男とエッチしたりするの?」
「まあ、たまにはね」
「それってやっぱり、おしりに入れられたりとか?」
「ムフフ・・・」
「痛くない?」
「最初の頃は痛かったけど、慣れてきたらこれがまたけっこう気持ちエエねん♪」
「へえ、なんか面白そうな話やな」
「きみらもいっぺん女装してみる?」
「いや、俺らはそんなんアカンわ。きみみたいに可愛かったら似合うやろけど」
「あーら、お上手だこと」
「名前、何ていうの?」
「私? ヒカルちゃんで~す」

お嬢さんが電話を終えたらしく、俺の肩をちょんちょんたたいてきた。
「わかったわよ。マリちゃんと同じ店で働いてるんやって、住み込みで」
「ホンマに?」
「ミナミの"ダンシング・ドール"ってお店らしいよ」
「サンキュー、おかげで助かったわ」
そういって、ムギュ~ッと抱きついてやった。

女装も、たまには役に立つもんやな。
スポンサーサイト

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/02/11 15:50】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0)
<<性同一性障害について | ホーム | 自由を奪われることの快感>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://pinkcat1009.blog22.fc2.com/tb.php/8-7144df22
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
桃猫(pink-cat)のお部屋


普段の私は「オトコ」として生活してます。といっても、こんな長い髪してますから、相当怪しいヤツと思われてるかも・・・でもいいんです。そういうの好きだから。

プロフィール

pink-cat

Author:pink-cat
はじめまして♪
私、桃猫(pink-cat)が書いた小説と写真です。どうかご覧ください。

最近の記事

カレンダー

05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

FC2カウンター

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。